無数にある本の海から、それぞれの出会いを経て、自分の本棚にやってきた本たち。繰り返し読んでしまう本、人生の指針を教えてくれた本、わたしのいちばん好きな本。理由も出会いもさまざま。気になるあの人はどんな本を読んできたのか。それぞれの個性がつまった本棚を、ウェブと書店とで連動して紹介する「本棚の旅」。
今回はイラストレーターの、神山奈緒子さんおすすめの本のお話をお聞きしました。
『モモ』
時間泥棒と盗まれた時間を人間に取り返していく女の子の不思議な物語。
この本はわたしが小学生の頃から繰り返し読んでいる本です。
時間はだれにとっても平等。
限りがあるからこそ、いまを大切に生きると言うことをこの本からいつも教えられていました。
わたし自身も父親が若くして亡くなったのをきっかけに、人生には限りがあることを実感し、時間の使い方を考えるようになりました。
過去の辛い記憶や未来に不安を抱いて生きるのではなく、自分とって何が大切で、どう生きていくのが自分らしいのかということを考えさせてくれる本です。
昔読んだことあるよという方も多いかもしれませんが、大人になったいま、読み返してみるのもすごく良いと思います。
『山梨県の山』
コロナ禍により、わたしがこれまで趣味としていた『旅』と『はしご酒』がなかなかできない状況になりました。そんな中、友人の山梨百名山達成の記念登山に連れて行ってもらい、これまで知らなかった山という世界に興味を持ち始めました。
山に囲まれた山梨県では、美しい四季折々の自然を見ることができます。頭でわかってはいたけれど体験するとこんなにも見える世界は変わるんだと思いました。
こんなにも知らない世界があったんだという驚きと喜びで、休みを山に使う時間が増え、わたし自身の描くイラストにも変化が出てきました。新しい視点に自ら触れることの大切さを実感しています。
この本は初心者でも楽しめる山梨県の山のコースが丁寧に紹介されています。
山を歩いてみたい。でも不安だらけ!登山口はどこ?トイレはあるの?どれくらい時間がかかるの?など最初は心配事ば
かり。
でも、この本の初心者向けのルートから丁寧に読み込んで歩いていけば、山を楽しめること間違いなしです。
この本片手に山梨の豊かな自然に触れてみてはいかがでしょうか。
きっと新しい世界が広がると思います!
本と書店への想い
自分と本について振り返ってみました。
●幼児期 ~名作と言われる物語が大好きで自分でも本書い ちゃう期~
幼い頃から本が大好きで、世界中の名作といわれる物語を繰り返し読み、自分で本を毎日のように書いていました。もちろんイラスト付き。
その日々がいまのイラストレーターという仕事につながる部分もあるのかなとふと思ったりします。
●小学生 ~とにかく数だ!なんでもいいからたくさん読む ぞ期~
小学生の頃は学校で図書室利用回数のランキング上位に常に いるという図書室ラバーでした。 もはや、誰よりも本を読みたい!という競争心みたいなもの もあったような気がします(笑) 休み時間の20分の間に図書室へ行き、本を借り、そこから校庭へ走ってドッヂボールに奮闘するという忙しい休み時間を送っていました。
結果的にあらゆるジャンルを毎日読むという習慣ができて、あの頃はあの頃で良かったのだなあと思います。
●中高大学生 ~サスペンス命!結論まで一気読み期~
祖父母の家で、山村美紗と西村京太郎の大量の文庫本を見つけてしまったのをきっかけに、そこからミステリー小説をこれでもかというくらい読んでいた時期があります。すべて一気読み。速読の術を身につけられたことが良かった時期。
●現在
今のわたしはもっぱら、山の本、動物たちが愛らしく描かれているエッセイ漫画、ワインに合う料理本、旅や街歩きなどの本を読むことが多くなりました。
本棚紹介は、今のわたしの頭の中を覗かれているような気持ちになり、正直とても恥ずかしいですが、自分の人生の歩みの途中には影響を与えてくれて、支えてくれる本の世界がそれぞれの時期であり、だからこそいまの自分もいるのだなあと振り返っていてなんだかしみじみとしてしまいました。
本との出会いは一期一会。
いまの自分だから出会えたということももちろんあるし、たくさんの本の中から出会いを引き寄せてくれる書店さんの力もすごく大きいなと感じます。
これから先どんな本に出会えるのかとても楽しみです。
神山奈緒子(かみやまなおこ)/イラストレーター
山梨県甲府市出身。都内でアパレルバイヤー、甲府で小学校講師を経て2017年イラストレーターとして活動開始。手描きの温かさを大切にイラストを描いている。近年は個展を毎年開催しているほか、JT rethink project 47都道府県シンボルマーク、TV CMイラストなどをはじめ、広告やワインラベルなどの商品パッケージのイラストを手がけている。趣味は山登りと旅とはしご酒。趣味から生まれる作品やお仕事も多い。